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カテゴリー:ラス恋入門
ラス恋 運営事務局
執筆者ラス恋 運営事務局
2026年10月15日

卒婚とは?離婚との違いと体験談・失敗談、生活費まで【50代・60代】

卒婚とは?離婚との違いと体験談・失敗談、生活費まで【50代・60代】

卒婚とは、離婚はせずに籍を残したまま、夫婦がお互いに干渉せず、それぞれの人生を送る暮らし方です。相続や扶養といった法律上のつながりは残りますが、ほかの人と結婚することはできず、配偶者以外との恋愛は不貞行為にあたるおそれがあります。

この記事では、卒婚と離婚・別居の違い、メリット・デメリット、生活費や年金・扶養の条件、始め方と書面の残し方、体験談・失敗談まで、50代・60代の方に向けて公的な情報をもとにまとめました。

卒婚とは?意味と3つの形

卒婚とは

卒婚とは、法律上の婚姻関係は続けたまま、夫婦がお互いの生活に干渉せず、それぞれ自分らしく暮らすことです。離婚とは違い、戸籍の上では夫婦のままです。暮らし方には、同じ家で生活を分ける「家庭内卒婚」、別々の家に住む「別居卒婚」、曜日で距離をとる「週末卒婚」の3つの形があります。

卒婚の意味|籍を残したまま「結婚を卒業する」暮らし方

💡 卒婚とは

法的な婚姻関係は維持したまま、夫婦がお互いの生活に干渉せず、それぞれの人生を歩む暮らし方

「結婚を卒業する」という意味を込めた言葉で、婚姻届を出したまま、夫婦の距離を見直す生き方です。

離婚とは異なり、法的な配偶者関係は解消されません。つまり戸籍上は夫婦のままであり、相続権や遺族年金などの権利も維持されます。ただし、別居する場合に遺族年金や扶養を受けるには、仕送りをしているなどの条件があります(くわしくは「卒婚後の生活費・年金・保険」の章で解説します)。

「卒婚」という言葉は、杉山由美子さんが2004年に出版した『卒婚のススメ』で使ったのが始まりとされています。子育てが一段落した50代・60代の夫婦を中心に、離婚でも我慢でもない選択肢として知られるようになりました。

🏠家庭内卒婚

住まい:同じ家

住まいや費用は変えずに、生活の干渉を減らしたい夫婦向け

🏘️別居卒婚

住まい:別々の家

それぞれの暮らしの場所を持ちたい・費用を負担できる夫婦向け

📅週末卒婚

住まい:平日は同じ家

いきなり別居はせず、まず一人の時間を持ちたい夫婦向け

家庭内卒婚|同じ家で暮らしながら、生活を分ける

同じ家に住んだまま、寝室・食事・家計・家事などを分けて、お互いに干渉しない形です。引っ越しの費用がかからず、家族や近所への説明もいりません。

一方で、毎日顔を合わせるので、ルールを決めておかないと不仲な「家庭内別居」と変わらなくなります。どこまでを一緒にして、どこからを別にするかを話し合っておくことが大切です。

別居卒婚|別々の家に住み、必要なときに連絡を取り合う

夫婦がそれぞれ別の住まいで暮らし、連絡を取り合いながら自立した生活を送る形です。自分の時間はいちばん取りやすい一方、家賃や光熱費が二重にかかります。

別居卒婚を選ぶなら、生活費の分担と、病気や介護のときにどうするかを、始める前に決めておく必要があります。

週末卒婚|平日と週末で、一緒の時間と一人の時間を分ける

平日は一緒に暮らし、週末だけ別々に過ごすなど、曜日で距離をとる形です。いきなり別居するのは不安な夫婦が、まずはお試しとして始めることもあります。

卒婚が注目される背景|長い老後と、離婚以外の選択肢

📊 卒婚が注目される3つの背景

  • 人生100年時代定年後も夫婦の時間が長く続く。「この先何十年もこのままでいいのか」と考える人がいる
  • 法律婚にこだわらない価値観婚姻届や同居だけが夫婦の形ではない、という考え方が広がっている
  • 離婚のハードルの高さ世間体、子どもへの影響、お金の不安から、離婚には踏み切れない

特に50代前後の夫婦は、子どもが独立して夫婦二人の時間が増えると、価値観の違いや会話の少なさが表に出ることがあります。卒婚は、離婚はしたくないけれど、自分の人生も大切にしたいという夫婦にとって、中間の選択肢になっています。

卒婚と離婚・別居の違い

この章の答え

卒婚と離婚のいちばんの違いは、戸籍の上で夫婦のままかどうかです。卒婚なら相続や扶養などのつながりが残り、離婚すればそれがなくなる代わりに、再婚ができるようになります。別居や家庭内別居も籍は残りますが、夫婦が話し合って納得したうえで選んでいるかどうかが、卒婚との違いです。

卒婚と離婚の違い|比較表

項目卒婚離婚
婚姻関係✓ 続く✕ 解消
相続権✓ あり✕ なし
遺族年金✓ 対象(別居なら仕送りなどの条件あり)✕ 対象外
年金・健康保険の扶養✓ 続けられる(別居なら仕送りなどの条件あり)✕ 外れる
配偶者控除✓ 対象になる(別居なら生活費の送金が条件)✕ 対象外
再婚✕ できない✓ できる
生活費(婚姻費用)の分担続くなくなる(財産分与・年金分割で清算)

※遺族年金・扶養・配偶者控除には、収入などほかの条件もあります(日本年金機構)(国税庁)。

卒婚の最大の特徴は、婚姻関係を続けながら、夫婦としての生活を見直せる点です。離婚とは違って戸籍上は夫婦のままなので、相続権や遺族年金などの権利がすぐに失われることはありません。

その代わり、籍が残るかぎり新しい相手と結婚することはできず、生活費を分担する義務も続きます。

卒婚と別居・家庭内別居の違い|夫婦で合意しているかどうか

別居も家庭内別居も、卒婚と同じく籍は残ったままです。違いは、夫婦が話し合い、お互いに納得して選んだかどうかです。

項目卒婚別居家庭内別居
始まり方話し合って合意する不仲や離婚の準備として始まることが多い不仲のまま同じ家で避け合う
夫婦の関係お互いの人生を尊重する冷え込んでいる・対立していることもある会話がほとんどないことが多い
ルール生活費・連絡などを決めておく決めないまま始まることもある決めていないことが多い

気持ちの面では前向きな卒婚でも、別々に暮らす期間が長く続くと、のちに離婚を話し合う場面で「夫婦関係が続いているか」を判断する事情の一つとして見られることがあります。卒婚を始めるときは、お互いの考えを書面に残しておくと、のちの話し合いで役に立ちます。

なお、結婚した当初から別々に暮らす夫婦の形は「別居婚」と呼ばれます。卒婚とは始まり方が違います。

卒婚で離婚しないのはなぜ?|選ばれる4つの理由

✓ 離婚せず卒婚を選ぶ4つの理由

  • 経済的な安定相続権や遺族年金の権利を残しながら、自分の生活を送れる(別居の場合は仕送りなどの条件あり)。専業主婦・パートの方には大きな理由になる
  • 世間体・社会的な立場籍はそのままなので、周りへの説明がしやすい
  • 子どもへの影響を小さくできる法律上は夫婦のままなので、「離婚」を伝える必要がない
  • 将来の柔軟性お試し期間として始められ、同居に戻る道も残せる

⚠️ 注意

卒婚中も法律上は夫婦です。配偶者以外の人と交際すると、不貞行為にあたるおそれがあります。くわしくは「卒婚中の恋愛は不倫になる?」の章で解説します。

卒婚のメリット・デメリット

この章の答え

卒婚のメリットは、離婚の手続きをせずに、自分の時間と生活を取り戻せることです。デメリットは、籍が残るぶん再婚ができないことや、生活費の分担・介護の義務が続くことです。

卒婚の5つのメリット

✓ 卒婚の5つのメリット

  • 離婚の手続きがいらない卒婚に役所への届け出は不要。夫婦の話し合いだけで始められ、心理的なハードルが低い
  • 法律上の権利が残る相続権、遺族年金、健康保険・年金の扶養、配偶者控除が続く(別居なら仕送りなどの条件あり)
  • 世間体・子どもへの影響が小さい法律上は夫婦のまま。周りとの関係を大きく変えずに、自分の生活を送れる
  • 自分の時間と人生を取り戻せる夫婦としての役割から離れて、趣味・仕事・友人との時間を増やせる
  • やり直しがきく気持ちが変われば同居に戻ることもできる。離婚よりも元に戻しやすい

卒婚の5つのデメリット

✕ 卒婚の5つのデメリット

  • 再婚ができない婚姻関係が続いているため、新しい相手と結婚することはできない(民法732条・重婚の禁止)
  • 恋愛は不貞行為にあたるおそれがある配偶者以外と交際すると、離婚や慰謝料を求められる理由になりうる
  • 生活費の分担が続く夫婦の生活費(婚姻費用)を分担する義務は、別居しても続く(民法760条)。収入差があると揉めやすい
  • 介護の問題が残る夫婦の協力・扶助の義務(民法752条)は続くので、相手が病気や要介護になったとき、どう関わるかが問われる
  • 孤立しやすく、最後は離婚に進むこともある一人の時間が増えるぶん孤独を感じやすい。お試しのつもりが、話し合いの末に離婚を選ぶ夫婦もいる

メリットとデメリットのどちらが大きいかは、夫婦の収入、健康、子どもとの関係によって変わります。お金の面は、次の章でくわしく見ていきます。

卒婚後の生活費・年金・保険|何が残り、何に条件があるか

この章の答え

卒婚しても、夫婦の生活費を分担する義務(婚姻費用)は続きます。年金や健康保険の扶養、配偶者控除、相続も残りますが、別居する場合は「仕送りをしている」などの条件を満たす必要があります。

項目卒婚後別居卒婚の条件
生活費(婚姻費用)分担の義務が続く金額と払い方を夫婦で決める
健康保険・年金の扶養続けられる年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)で、仕送り額より少ないこと
配偶者控除受けられる生活費の送金が続いていること(配偶者の所得の条件もあり)
遺族年金受け取れる可能性がある亡くなった人に生計を維持されていたこと(仕送りなど)
相続配偶者として相続人になる別居でも変わらない

(日本年金機構)(国税庁)をもとに作成。くわしい条件は、年金事務所や税務署、加入している健康保険でご確認ください。

生活費(婚姻費用)|別居しても分担は続く

夫婦は、収入や財産に応じて生活費を分担する義務があります(民法760条)。この生活費を「婚姻費用」といい、卒婚して別々に暮らしても、この義務はなくなりません。

夫婦の収入決め方の例
2人とも収入があるそれぞれの生活費は各自で払い、足りない分を話し合って補う
一方が専業主婦(主夫)収入のある側が、婚姻費用として生活費を渡す

金額の目安には、家庭裁判所で使われている「養育費・婚姻費用算定表」が参考になります(裁判所)。夫婦それぞれの年収をあてはめると、ひと月あたりの目安がわかります。

📋 書面にしておきたい5つのこと

  • 毎月の生活費の金額
  • 払い方と支払日
  • 家賃・光熱費・通信費の分担
  • 医療費や冠婚葬祭など、特別な出費の扱い
  • 払えなくなったときの対応

健康保険・年金の扶養|別居なら「仕送り」が条件

会社員や公務員の配偶者の扶養に入っている人は、卒婚しても扶養を続けられます。同居していなくてもかまいません。

ただし別居する場合は、年収が130万円未満(60歳以上は180万円未満)で、なおかつ配偶者からの仕送り額より少ないことが条件です。手続きのときは、振込明細や通帳の写しなど、仕送りの事実と金額がわかる書類が必要になります(日本年金機構)。

国民年金の第3号被保険者(保険料を自分で払わずに年金の加入期間になる扶養)は、60歳になるまでが対象です。

配偶者控除|同居していなくても、生活費の送金があれば対象

配偶者控除を受けるには、配偶者と「生計を一にしている」必要があります。これは同居が条件ではなく、別居していても生活費の送金が継続して行われていれば、生計を一にしているものとして扱われます(国税庁)。配偶者の所得が一定以下であることなど、ほかの条件もあります。

遺族年金と相続|籍が残るので権利も残る

遺族年金を受け取るには、亡くなった人に「生計を維持されていた」ことが条件です。別居していても、仕送りを受けていたり、健康保険の被扶養者だったりすれば認められます。あわせて、受け取る人の年収が原則850万円未満であることなどの条件もあります(日本年金機構)。

⚠️ 仕送りのない別居卒婚は要注意

仕送りのない別居卒婚では、遺族年金を受け取れない可能性があります。卒婚を決めるときは、仕送りの有無と記録の残し方まで話し合っておくことをおすすめします。

相続では、配偶者は常に相続人になります(民法890条)。卒婚して別々に暮らしていても、この点は変わりません。ただし、遺言の内容によって受け取る財産は変わります。

別居卒婚で住民票を移すと、世帯は別になります。扶養や年金の手続きでは、住所が別でも仕送りの記録があれば対象になるので、記録を残しておくことが大切です。

卒婚のやり方|切り出し方・ルール・書面の残し方

この章の答え

卒婚に、役所への届け出はいりません。夫婦で話し合って合意し、住まい・お金・連絡の取り方などのルールを決めて、書面に残せば始められます。

STEP1夫婦で話し合う
STEP2ルールを決める
STEP3書面に残す

卒婚の切り出し方|不満ではなく「お互いの自由」として伝える

💬 卒婚を提案するときのポイント

  • 落ち着いて話せる場所と時間を選ぶ
  • 不満を並べるのではなく、「お互いに自由な時間を持ちたい」と前向きに伝える
  • 離婚ではなく「新しい夫婦の形」として説明する
  • ふだんから、老後や将来の暮らしについて話しておくと切り出しやすい

🔔 配偶者から切り出されたとき

  • 感情的にならず、まず相手の本音を聞く
  • 「離婚までは考えていないのか」を確かめる
  • その場で答えを出さず、時間をとって自分の考えを整理する
  • 必要に応じて、弁護士やカウンセラーに相談する

決めておきたいルール|チェックリスト

🏘️ 別居卒婚で決めておきたいこと

  • 住む場所と家賃の負担
  • 生活費の金額と払い方
  • 連絡の頻度
  • 子どもや孫と会うときのこと
  • 医療・不動産など大きな決断の決め方

🏠 家庭内卒婚で決めておきたいこと

  • 寝室・リビングの使い分け
  • 食事を一緒にするか
  • 掃除・洗濯・買い物の分担
  • 友人や家族を招くときのこと

🤝 どの形でも決めておきたいこと

  • 病気や介護が必要になったときの対応
  • 子ども・親族への伝え方
  • ルールを見直す時期
  • 卒婚をやめる(同居に戻る・離婚する)ときの話し合い方

合意書・公正証書|2026年4月から、夫婦間の取り決めは一方的に取り消せなくなった

決めたルールは、合意書にして夫婦それぞれが1通ずつ持っておきます。特にお金の取り決めは、口約束だけにしないことが大切です。

📌 2026年4月の民法改正

これまで民法には「夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも一方から取り消せる」という規定(旧民法754条)がありました。この規定は、2024年に成立した民法等の一部を改正する法律で削除され、2026年4月1日から、夫婦間の取り決めもほかの契約と同じように守る義務があると考えられるようになりました(法務省)。それより前に交わした取り決めの扱いは、弁護士などの専門家への確認をおすすめします。

生活費の支払いなどを確実にしたい場合は、公証役場で公正証書にする方法があります。公正証書にしておくと、取り決めた内容を証明しやすくなります。

公正証書の手数料は、取り決めた金額(目的価額)によって決まります。

取り決めた金額手数料
50万円以下3,000円
50万円を超え100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下13,000円
500万円を超え1,000万円以下20,000円
1,000万円を超え3,000万円以下26,000円

※2025年10月1日の改正後の手数料です。ほかに、証書の枚数などによる加算があります(日本公証人連合会)。

合意書や公正証書の内容に不安があるときは、作る前に弁護士や行政書士に相談すると、書き漏れを防げます。

卒婚の体験談・失敗談

この章の答え

卒婚がうまくいった人と失敗した人の違いは、始める前に、お金とルールをきちんと話し合ったかどうかです。ここでは、卒婚を経験した人の声と、失敗しやすいパターンを紹介します。

※以下の体験談は、複数の卒婚経験者への取材・相談事例をもとに、プライバシー保護のため詳細を一部変更して再構成したものです。

50代女性の再スタート

50代女性|「自分の人生を取り戻せた」

52歳・婚歴28年・パート主婦→正社員・子ども独立済み

卒婚までの経緯

子どもの独立後、夫と二人きりの時間が増えたが話すこともなく空気が重い日々。雑誌で「卒婚」を知り、離婚ではない別居の選択肢を発見。

切り出し方

「お互いに自由な時間を持ってみないか」と提案。驚いたことに夫も同じことを考えていた。公正証書を作成し、生活費は月15万円で合意。

「今は夫は『親しい親戚』のような存在です。お互いの生活を尊重し合い、必要な時だけ助け合う関係が最適な形だと感じています」

3年後の現在

正社員として経済的自立を実現。「一番の変化は、自分の人生を自分で選べるようになったこと」と笑顔で語ってくれました。

「お試し期間」としての卒婚が上手くいきました

卒婚→離婚→再出発|「お試し期間」としての卒婚

48歳→51歳で離婚・婚歴23年・会社員女性・子どもあり

卒婚を選んだ理由

夫の浮気が発覚。子どもの受験を控えていたため、「卒婚」という形で別居を選択。感情的にならず時間をかけて考える「お試し期間」として機能。

別居→離婚→新しい出会い

別居3年後、双方合意の上で離婚。財産分与も揉めずに円満離婚。その後マッチングアプリに登録し、同年代の人と穏やかな交際を開始。

「『離婚は失敗ではない』『人生は終わらない』という気持ちになりました。卒婚の期間があったおかげで、冷静に未来を選択できました」

卒婚の失敗談

60代女性|「勢いで始めて、かえって関係が悪化した」

61歳・婚歴35年・専業主婦・子ども独立済み

卒婚を急いだ理由

長年の不満が積み重なり、「もう一緒には暮らせない」と感情のまま別居を決断。生活費の分担や連絡頻度、病気や介護のときの対応を十分に話し合わないまま卒婚を始めてしまいました。

実際に困ったこと

別居後、想像以上に生活費がかかり、自分の貯蓄が急速に減少。夫側も「どこまで負担するのか」の認識が曖昧で揉めごとが増え、子どもまで巻き込む形に。孤独感も強く、気軽に相談できる相手がいなかったことで精神的にも追い詰められました。

「『離れれば楽になる』と思っていましたが、準備不足のまま始めると問題が先送りになるだけでした。感情より先に、お金とルールの確認が必要だったと痛感しました」

振り返ってわかった教訓

現在は第三者を交えて話し合いをやり直し、生活費・連絡ルール・今後の住まい方を文書化。本人は「卒婚そのものが悪いのではなく、準備なしで始めたことが失敗だった」と振り返っています。

3人の話からわかるのは、卒婚は始め方しだいで、自分らしい生活を取り戻すきっかけにも、関係が悪くなるきっかけにもなるということです。勢いで進めるのではなく、生活費・連絡頻度・住まい・介護のときの対応などを先に整理してから判断することが大切です。

卒婚後の失敗例4パターンと対策

失敗のパターン起きること対策
生活費の不公平感払う額・受け取る額への不満がたまり、トラブルになる金額と払い方を書面にする。必要なら公正証書に
周りからの孤立一人の時間が増え、孤独で精神的に追い詰められる別居する前から、友人や趣味のつながりをつくっておく
介護の問題相手が病気や要介護になり、卒婚を続けるかで揉める病気・介護のときにどうするかを先に決めておく
離婚への発展お試しのつもりが、話し合いの末に離婚になる離婚になった場合のお金(財産分与・年金分割)も考えておく

卒婚した芸能人|清水アキラさんは「卒婚を卒業」して同居に戻った

この章の答え

卒婚を公表した芸能人として知られるのが、ものまねタレントの清水アキラさんです。清水さんはその後「卒婚を卒業」し、現在は妻と東京で暮らしています。

清水アキラさん|長野と東京で別々に暮らし、その後に同居を再開

2013年11月|「卒婚」を公表

イベントやテレビの電話取材で、離婚ではなく「卒婚」であることを明かす。夫婦で3年ほど前から話し合い、清水さんは故郷の長野県へ、妻は東京に残る形を選んだ(オリコンニュース)。

長野で一人暮らしを始めて約1年|妻の大変さに気づく

家事を自分でこなすなかで妻の大変さに気づき、妻に「卒婚を卒業したい」と伝えた。

2025年1月|「卒婚を卒業」したと語る

本人インタビューで、妻も受け入れ、2人で東京で結婚生活を再開したと話している(めざましmedia)。

卒婚は、一度始めたら戻れない選択ではありません。距離を置いたことで、相手の存在の大きさにあらためて気づく夫婦もいます。

ただし、有名人の例は参考にはなりますが、仕事や収入、住まいの事情は一般の家庭とは大きく違います。自分たちに合う形は、夫婦の話し合いで決めることが大切です。

卒婚中の恋愛は不倫になる?法律上のリスクと注意点

この章の答え

卒婚中も法律上は夫婦なので、配偶者以外の人と肉体関係を持つと「不貞行為」にあたるおそれがあります。配偶者から離婚や慰謝料を求められる理由になりうるほか、交際相手が責任を問われることもあります。新しいパートナーとの関係を望むなら、離婚を成立させることが先です。

法律上は「不貞行為」にあたるおそれがある

不貞行為は、法律上の離婚の理由の一つです(民法770条)。卒婚して別々に暮らしていても、籍が残っているかぎり夫婦であることに変わりはありません。

⚠️ 配偶者以外の人と交際した場合に起こりうること

  • 配偶者から慰謝料を請求される不貞行為を理由に、慰謝料を求められるおそれがある
  • 離婚の話し合いで不利になる離婚を切り出されたとき、条件の話し合いで不利になるおそれがある
  • 交際相手も請求される交際相手の側も、慰謝料を請求される可能性がある

「恋愛は自由」と合意書に書いても、安心はできない

卒婚のときに「お互いの恋愛は自由」と取り決める夫婦もいます。配偶者が同意していれば、その配偶者からの請求は認められにくくなる可能性がありますが、合意の内容や、その後の状況によって判断は分かれます。

また、婚姻関係がすでに破綻していたあとの交際については、原則として不法行為にあたらないとした判例があります(最高裁判所 平成8年3月26日判決)。ただし、卒婚は夫婦が合意して関係を続けている状態なので、卒婚していること自体で「破綻している」と認められるとは限りません。

恋愛を考えているときは、合意書があるから大丈夫と考えず、弁護士に相談してから判断すると安心です。

卒婚中は、独身向けのマッチングアプリや結婚相談所は使えない

多くのマッチングアプリや結婚相談所は、独身であることを利用の条件にしています。結婚相談所の多くは、入会のときに独身証明書の提出を求めています。

ℹ️ ラス恋の利用条件

40歳以上向けのマッチングアプリ「ラス恋」も、利用できるのは独身の方(離婚が成立している方を含む)だけです。既婚者は、婚約者がいる場合や、別居中・離婚協議中の場合も含めて、利用規約で登録を禁止しています(ラス恋 利用規約)。

卒婚中に新しい出会いを探すことはできません。この先、新しいパートナーと生きたいと考えているなら、まず離婚について配偶者と話し合い、離婚を成立させることが必要です。

卒婚か離婚か迷ったときの考え方

この章の答え

卒婚は、籍のつながりを残したい理由がある夫婦に向いています。一方で、この先は別々の人生を歩みたい、新しいパートナーと生きたいと考えているなら、離婚のほうが合っています。

卒婚が向いている人・離婚が向いている人

💗 卒婚が向いている人

  • 相手を嫌いではないが、毎日一緒にいるのが負担
  • 相続・年金・扶養のつながりを残したい
  • 子どもや親族への影響を小さくしたい
  • いずれ同居に戻る可能性も残したい

🔷 離婚が向いている人

  • 顔を合わせるのも苦しく、話し合いができない
  • 生活費の分担や介護の義務を、この先は続けたくない
  • 新しいパートナーとの暮らしや再婚を考えている
  • 財産分与や年金分割で、お金の区切りをはっきりつけたい

⚠️ 暴力や暴言、お金を渡さないなどの行為がある場合

卒婚や離婚を考える前に、まず自分の安全を守ることが大切です。配偶者からの暴力については、「DV相談ナビ」(#8008)で、近くの配偶者暴力相談支援センターなどの相談窓口につながります(内閣府 男女共同参画局)。

熟年離婚は珍しくない|同居20年以上の離婚は年間約4万組

39,888組同居20年以上の夫婦の離婚(2025年)
約4組に1組同居期間がわかっている離婚に占める割合

2025年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上の夫婦は39,888組でした(厚生労働省「人口動態統計」)。同居期間がわかっている離婚のおよそ4組に1組にあたります。

長く連れ添った夫婦が、別々の道を選ぶことは珍しくありません。卒婚と離婚のどちらを選んでも、大切なのは、二人が納得して決めることです。

離婚を選ぶなら知っておきたいお金の期限

5年財産分与の請求期限(2026年4月以降の離婚。以前は2年)
5年年金分割の請求期限

2026年4月1日以降に離婚した場合、財産分与を請求できる期間は、離婚から2年から5年に延びました(法務省)。年金分割の請求期限も、同じく離婚から5年になっています(日本年金機構)。

どちらも期限を過ぎると請求できなくなります。離婚を考え始めたら、早めに財産と年金の記録を確認しておきましょう。年金分割の情報は、年金事務所で確認できます。

卒婚のよくある質問

Q. 卒婚とはどういう状態ですか?

離婚はせずに籍を残したまま、夫婦がお互いの生活に干渉せず、それぞれ自由に暮らしている状態です。同じ家で生活を分ける「家庭内卒婚」、別々の家に住む「別居卒婚」、曜日で距離をとる「週末卒婚」などの形があります。

Q. 卒婚と離婚の一番の違いは?

戸籍の上で夫婦のままかどうかです。卒婚では婚姻関係が続くため、相続権や遺族年金、扶養などの権利が残ります(別居なら仕送りなどの条件あり)。離婚するとこれらはなくなりますが、再婚できるようになります。

Q. 卒婚したら生活費はどうなる?

夫婦の生活費を分担する義務(婚姻費用)は、卒婚して別居しても続きます(民法760条)。金額や払い方は夫婦で話し合って決め、合意書や公正証書に残しておくとトラブルを防げます。

Q. 卒婚しても年金や健康保険の扶養は続く?

続けられます。ただし別居している場合は、年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)で、配偶者からの仕送り額より少ないことが条件です(日本年金機構)。遺族年金も、別居なら仕送りを受けていたことなどが条件になります。

Q. 卒婚中に恋人をつくったら不倫になる?

不貞行為にあたるおそれがあります。卒婚中も法律上は夫婦なので、配偶者から離婚や慰謝料を求められる理由になりえます。「恋愛は自由」と合意書に書いても、事情によって判断が分かれるため、安心とは言えません。

Q. 卒婚中に再婚することはできる?

できません。婚姻関係が続いているため、ほかの人との婚姻届は受理されません(民法732条・重婚の禁止)。再婚したい場合は、先に離婚を成立させる必要があります。

Q. 卒婚に弁護士は必要?

卒婚自体に届け出や弁護士は必要ありません。ただし、生活費などの取り決めを合意書や公正証書にするときは、弁護士や行政書士に相談すると書き漏れを防げます。公正証書の手数料は、取り決めた金額によって決まります(日本公証人連合会)。

まとめ|卒婚は籍を残して距離をとる選択

卒婚は、婚姻関係を残したまま、夫婦としての暮らし方を見直す選択です。離婚とは違い、相続権や遺族年金、扶養などの権利を残しやすい一方で、再婚はできず、生活費の分担や介護、不貞行為のリスク、孤独感といった課題も残ります。

大切なのは、感情だけで決めず、住まい・お金・連絡の取り方・この先の方針を先に話し合い、合意書や公正証書に残しておくことです。卒婚・離婚・同居を続けることのどれが自分たちに合うのかを、焦らずに見極めましょう。

  • 卒婚とは、離婚せずに籍を残したまま、夫婦がお互いに干渉せず暮らすこと
  • 形は、家庭内卒婚・別居卒婚・週末卒婚の3つ
  • 相続・遺族年金・扶養・配偶者控除は残るが、別居なら仕送りなどの条件がある
  • 生活費(婚姻費用)を分担する義務は、別居しても続く
  • 再婚はできない。配偶者以外との恋愛は不貞行為にあたるおそれがある
  • 2026年4月から、夫婦間の取り決めは一方的に取り消せなくなった。合意書・公正証書に残しておく
  • 新しいパートナーと生きたいなら、離婚の成立が先

【引用・参考文献】

監修者
藤崎 薫
藤崎 薫 / ミドルシニア専門 婚活アドバイザー

「人生の後半戦こそ、最高のパートナーと。」をモットーに活動する婚活アドバイザーです。大手結婚相談所で10年間、主に40代〜60代の会員様を担当し、数多くの成婚を見届けてきました。若者の婚活とは違い、ミドルシニアのパートナー探しには、介護、資産、そしてこれまでの人生経験という「重み」が伴います。私自身も50代。同世代だからこそ分かる悩みや焦りに寄り添いながら、傷つかないための大人の距離感や、最後の恋を愛に育てるための具体的なアドバイスをお届けします。

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